スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第121回定演特集 ~その4~

 フランクといえば『ヴァイオリン・ソナタ』一強みたいなとこがありますが、他にも『交響曲 ニ短調』とか『交響的変奏曲』とか、『ピアノ五重奏曲 ヘ短調』も素晴らしい作品ですね。これらの傑作群が彼の後半生に出てくるものだから、フランクは大器晩成型の音楽家だと思ってしまいがちなのですが、実際のところは幼少期から音楽の天分に恵まれた早熟の天才音楽家でした。
 しかしこの話は案外知れているような気もします。
 いわゆる代表作として認知されているものをいろいろ聴いてみても分かることなのですが、彼の音楽は一般大衆にすんなりと受け入れられるような明快なものではなく、むしろ晦渋で玄人好みな部分もあって時に難解なものです。若くして父親の方針に従い、リストのようなスターピアニストへの道を歩いていた頃は、生み出される作品にも華麗で装飾的な音楽が聴こえましたが、道半ばでその方針を捨ててより地道な活動へと進んでいったことからも分かる通り、そのような派手で華々しい生き方も音楽もフランク本来の性分ではなかったのです。
 その後の彼は後進の育成に注力し、門下生にはショーソン、ルクーやダンディなどが名を連ねていますが、彼らは後に来る印象主義音楽と対比されることが多いようです。確かに、フランク一派の音楽とドビュッシーの音楽は、類似点よりも相違点の方が多く感じられます。フランクは教会オルガニストとしても評価を得るようになり、40歳を前にして就いたサント=クロチルド教会のオルガニストの職には終生留まり続けました。彼の即興演奏を聴くために礼拝やミサに人が多く訪れるようになり、また自作曲や他の作曲家の作品を紹介する音楽会も開いたようです。こうした諸々の活動によって、最終的にフランクはフランス音楽界の重鎮として目されるようになりました。ピアニストとして道を歩み続けていたら、このような名声を得られていたかどうかは怪しいものです。
 今回演奏される『プレリュード、コラールとフーガ』は、後期のいわゆる傑作群の中の一作品です。若い時分にピアノ曲を作って以来、彼はこの分野には全くと言っていい程に興味を示さず、ほぼ40年間は(『人形の嘆き』を除いては)ピアノ独奏曲を作っていませんでした。しかし、彼の記念すべきOp.1である『ピアノ三重奏曲』が蘇演されたのに立ち合い、久々にピアノという楽器に対する興味が湧いたようで、立て続けにピアノ音楽を世に送り出します。この曲は名前の通り、プレリュード/コラール/フーガという3つの部分に分かれていますが、それぞれは切れ目なく演奏されるので実質的には休みなく20分を要する曲となっています。
 フランクの音楽に顕著な特徴と言えば循環形式で、この曲にも例に漏れず主題の循環が見られます。長いフーガが最も高揚して頂点を作り上げると、突如としてプレリュードのような走句と共にコーダが始まり、次第に熱が収まっていくと16分音符の静かな波の中からコラールの深遠な主題が浮かび上がってきます。そしてまた徐々に音楽が盛り上がってきて、ffで力強くコラール主題が奏される裏側で、今度はフーガの半音階的な主題が覆いかぶさるように鳴り響きます。ですから、このコーダでは3つの部分が循環して、しかも同時に鳴り響いている訳ですね。人間の手は2本しか生えてないというのに、随分と無体なことをやらせるものです。
 「今回はやけに詳しく書くなあ?」と思っているかも分かりませんが、それもそのはず。この『プレリュード、コラールとフーガ』を弾くのが自分だからです……。大変な曲に挑戦してしまったものだなあ、と今書きながら改めて実感しているところです。しかしまあ、大変な名曲には変わりないので、これまでフランクと言えば『ヴァイオリン・ソナタ』しかご存知なかった人にも、この曲で彼の別の側面を聴いて頂ければいいなと思っております。

《今日の1曲 ~第24回~》
『コンセール形式によるクラヴサン曲集 第5集 / ラモー』

 ジャン・フィリップ・ラモーはフランスの人でバッハと同時代の音楽家です。和声とか調性というものを最初に体系化させた人としても有名で、彼の書いた『和声論』は近代和声理論の確立に大きく貢献しました。『クラヴサン曲集』というチェンバロ独奏用の曲集はピアノでも弾かれることが多く、知っている人も多いように思います。彼が当時最も力を注いだのは劇音楽であり、オペラ作曲家としての名声が高かったらしいのですが、それらは現在では再演の機会を待つものが多いようです。しかし、最近になって色々なオペラ作品が段々と舞台で取り上げられるようになってきたのはとても喜ばしいことだと思います。
 今回の『コンセールの形式によるクラヴサン曲集』は全部で5集から成り、ヴァイオリンまたはフルート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロという編成です。こうした編成だとトリオ・ソナタかと思ってしまいますが、名前にある通りコンセール(=協奏もしくは合奏)形式によっていて、チェンバロを1つのソロパートとして据えて他の楽器と協奏させる形を取っています。それなので、鍵盤楽器が通奏低音として扱われるトリオ・ソナタなどとは違い、ここではチェンバロ譜も独奏用と同じく両手がちゃんと記譜されています。
 この時代のフランス音楽によく見られるのですが、この曲集にも各曲に標題的なタイトルが与えられています。今回紹介する第5集では第1曲「フォルクレ(作曲家)」、第2曲「キュピ(人名)」、第3曲「マレ(作曲家)」というようなタイトルが冠せられています。クープランの様々な曲にも同じく象徴的なタイトルが付けられているので、当時のフランス人の機知というか精神というか、気質が感じられて面白いですね。

『コンセール形式によるクラヴサン曲集 第5集 / ラモー』
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。